Efficacy and Effectiveness of Showerheads Attached with Point-of-use (POU) Filter Capsules in Preventing Waterborne Diseases in a Japanese Hospital
(国内の医療機関での水系感染疾患の予防におけるPOUフィルターを装着したシャワーヘッドの効力と有用性)
Biocontrol Science, 2020, Vol. 25, No. 4, 223—230
Teppei Sasahara, Masanori Ogawa, Itaru Fujimura, Ryusuke Ae, Koki Kosami, Yuji Morisawa
https://doi.org/10.4265/bio.25.223論文の概要水道水には院内感染の原因となる病原体が存在しており、水道水の微生物汚染は医療機関において懸念が広がっている。シャワーユニットは細菌増殖を助長し、特に微生物汚染が多く発生する。ポイントオブユースフィルター(POU)とシャワーユニットの組み合わせはシンプルでかつ安全を確保するための対策の選択肢の1つである。そこで、院内における感染予防を目的として、3セットのシャワーヘッドを用いて2ヶ月にわたる観察によりPOUの有用性を調べた。POUフィルターを装着しない場合は生菌数は370~430 CFU/100mlであったが、POUフィルターを装着して装着時、1か月後及び2か月後に生菌数を調べたところ、装着時に1セットのシャワーヘッドから
Staphylococcus epidermisが1 CFU/100ml、2か月後に他の1セットのシャワーヘッドからS. capitisが2 CFU/100ml検出されたのみで、それ以外は生菌は検出されなかった。また、POUフィルターの効力を検討するために3菌種の標準株(
Brevundimonas diminuta ATCC 19146,
Klebsiella pneumoniae BWH2 (NR-41897),
Pseudomonas aeruginosa ATCC 10145)を用いて、それぞれの浮遊液(880 CFU/ml, 530 CFU/ml, 740 CFU/ml)を5Lずつ作成し、全量をPOUフィルターでろ過した。その結果、ろ液からは菌は検出されなかった。POUフィルターにより医療機関における水系感染症を最小限に抑え、患者のケアを向上させることができると考える。
研究会からの解説シャワーヘッドやホースの内部にバイオフィルムが形成され、
Legionella,
Mycobacterium,
Pseudomonasなどの院内感染の原因となる病原菌が増殖する。これまでにこうした病原菌による感染事例が多く報告されている。また、シャワーはエアロゾルの発生源となるため、本来厳しい管理が求められるデバイスである。そこで、シャワーを毎日通水し、さらにシャワーヘッドとホースを月に1~2回、塩素消毒する、あるいは60℃以上の高温水を30分以上通水することが推奨される。これに加えて、POUフィルターを装着したシャワーを使用することでシャワー水に含まれる病原菌等を取り除くことができ、POUフィルターの使用は欧米では広く普及している。