超意外！儒教なのに御朱印がある？

【住所】　東京都文京区湯島1丁目4

【宗派】　儒教

【創建】　元禄3年（1690年）

【祭礼】　孔子廟

【付属】　神農廟（非公開）

【授与所】斯文会館内

【授与品】御朱印、儒教関連書籍など

【駐車場】あり

【最寄駅】JR中央線　御茶ノ水駅
　　　　　東京メトロ丸ノ内線　御茶ノ水駅
　　　　　東京メトロ千代田線　新御茶ノ水駅

【HP】　　http://www.seido.or.jp/

【御由緒】
徳川五代将軍綱吉は儒学の振興を図るため、元禄3年（1690）湯島の地に聖堂を創建して上野忍岡の林家私邸にあった廟殿と林家の家塾をここに移しました。これが現在の湯島聖堂の始まりです。その後、およそ100年を経た寛政9年（1797）幕府直轄学校として、世に名高い「昌平坂学問所（通称『昌平校』）」を開設しました。

明治維新を迎えると聖堂・学問所は新政府の所管するところとなり、当初、学問所は大学校・大学と改称されながら存置されましたが、明治4年（1871）これを廃して文部省が置かれることとなり、林羅山以来240年、学問所となってからは75年の儒学の講筵は、ここにその歴史を閉じた次第です。ついでこの年わが国最初の博物館（現在の東京国立博物館）が置かれ、翌5年（1872）には東京師範学校、わが国初の図書館である書籍館が置かれ、7年（1874）には東京女子師範学校が設置され、両校はそれぞれ明治19年（1886）、23年（1890）高等師範学校に昇格したのち、現在の筑波大学、お茶の水女子大学へと発展してまいりました。このように、湯島聖堂は維新の一大変革に当たっても学問所としての伝統を受け継ぎ、近代教育発祥の地としての栄誉を担いました。

大正11年（1922）湯島聖堂は国の史跡に指定されましたが、翌12年（1923）関東大震災が起こり、わずかに入徳門と水屋を残し、すべてを焼失いたしました。この復興は斯文会が中心となり、昭和10年（1935）工学博士東京帝国大学伊東忠太教授の設計と㈱大林組の施工により、寛政時代の旧制を模し、鉄筋コンクリート造りで再建を果たしました。この建物が現在の湯島聖堂で、昭和61年度（1986）から文化庁による保存修理工事が、奇しくも再び(株)大林組の施工で行われ、平成5年（1993）三月竣工いたしました。

HPより

　今回やってきたのは、お茶の水を代表する文化財のひとつ、湯島聖堂です。お茶の水といえば、東京科学大学（旧東京医科歯科大学）、明治大学、日本大学歯学部・理工学部、中央大学、駿河台予備校など多数の学校が集まる一方、東京最古の神社である神田明神、キリスト教の日本ハリストス正教会の本部であるニコライ堂、最も有名な儒教の学問所が置かれた湯島聖堂があり、伝統宗教の最高位が集まる場所でもあります。

　そんな日本の儒教の聖地湯島聖堂で、最初に出迎えてくれるのがこの仰高門（ぎょうこうもん）です。瓦に似せて青銅で葺いた屋根が特徴の門です。仰高と書かれた扁額が飾られ、ここより先では人を見下さず、謙虚に人を高く尊び、仰ぎ見よという心構えを説いています。

　そんな意味深な仰高門を通って通路を進むと突き当りに新しそうな石碑が建っています。

　孔子銅像ノ建立ノ記とあります。孔子像を建立した由来について記したものです。像自体は結構前からあったのですが、説明書きがなかったので参拝者にも経緯を知ってもらおうと後年建てられたようです。

　その孔子像がこちらです。

　こちらは孔子像の中では世界最大だそうで、実物のほうがより大きさを実感できます。1975年（昭和50年）に台湾の新北市五股区を拠点とするライオンズクラブ「台北市城中獅子會（Taipei Cheng Chung Lions Club）」から寄贈されたものだそうで、こうやって現在も参拝者をお出迎えしています。

　ちなみに、湯島聖堂の境内はこんな雰囲気になっています。

　参道には石畳が敷かれ、その両脇には生け垣があります。参道を覆うほどに巨木が生えており、緑豊かな庭園になっています。正面の石段を登ると、お茶の水で有名な写真撮影のスポット聖橋につながっています。この聖橋の名は、湯島聖堂とニコライ堂という二つの聖堂を結ぶことから付けられたとのことです。

　一旦、階段を上って聖橋近くの本郷通りから境内を見てみます。

　うっそうとした緑の中に門や塀があるのが見えます。その先には秋葉原の一面ガラス張りの高層ビルが立ち並ぶ、近未来的な景色になっています。手前の野性味と古めかしさが混在し時が止まったようなエリアと、遥か彼方にまで時代が進んでしまったエリアとが隣り合っていて、そのコントラストの激しさをまざまざと見せつけられます。でも、これがこの町の面白さでもあります。

　そして、眼下に見えていた門がこちらです。

　入徳門（にゅうとくもん）といいます。屋根以外は黒塗りの重厚な門です。派手さが一切なく落ち着いた色合いであるだけに厳かな雰囲気を作っており、気持ちが引き締まる感があります。

　その入徳門をくぐると、右手に手水舎があります。

　こちらも全体的に黒基調で落ち着いたデザインです。ただ、境内で唯一これだけが部材の角が赤く縁取られていて、少々派手な色合いになっています。

　ただ残念なのが、損傷が激しいのか立入禁止になっていて、近づいて見ることができませんでした。手水鉢や龍口とかもどうなっているのか見てみたかったのですが、遠目から眺めることしかできず・・・。

　仕方ないので、先へ進みます。

　今度は長く緩やかな石段が現れました。急ではないのできつくはないものの、手摺りはあったほうがいいなと思ったりして。

　石段の先にはまた門が見えますね。何回門をくぐったらお堂にたどり着くんでしょうか？

　こちらは杏壇門（きょうだんもん）です。奥にお堂の扉らしきものが透けて見えるので、どうやらこの先がゴールのようです。

　他の門と違ってこの門だけ長屋門のような様式になっていて、一際大きいですね。しかも、両サイドの壁に丸窓が設けられているのがオシャレです。色も艶光する漆黒で重々しさを感じ、外界の華やかさとは打って変わった静寂も相まって、神聖な雰囲気を漂わせています。

　そんな杏壇門の前には水鉢が。

　四角いのが特徴で、古いせいか全体的に赤さびが付着しています。よく見ると中央に丸いものが。これは葵の御紋のレリーフで、この湯島聖堂を建てたのが江戸幕府第５代将軍徳川綱吉だからでしょう。こんなところにも、徳川の痕跡が残っています。

　その他にも、この門のそばにはこんな巨木も生えていました。

　何の木だかはわかりませんが、横に大きく枝を伸ばし門の軒にかかるほど成長しています。御神木の習わしがあるのかわかりませんが、かなり大事に扱われていそうです。

　いよいよ中へ入りました。正面に構えているのは、大成殿（たいせいでん）です。儒教の教祖孔子を祭る建物で、この中に祭壇があります。平日は閉め切っていますが、土日には公開していて中を拝観することができます。

　見ての通り、真っ黒な外壁に青銅製の屋根という地味な色合いです。本場中国の孔子廟だと赤基調の外壁に陶製瓦で、カラフルな彩色と彫刻を施しているのが一般的なので（元祖である世界遺産の曲阜の孔廟なんかはそう）、それとは対照的で日本のセンスに合わせているのかもしれません。

　しかし、よくよく端々を見ると様式やデザインが中国式なのがわかります。扉の細工や円柱を用いるところは日本の様式ではなく中国に見られる特徴で、異国情緒を感じられます。

　さらに屋根を見ると面白いものが載っています。

　恐らく鳳凰かと思われますが、尾の長い鳥の形をした彫像があります。これも元来は中国の空想上の動物なので、やはり中国に倣って建てられたことがわかります。

　最後に西口から見た景色を。

　こうやって端々まで見た後で改めて離れて見てみると、やはり中国の田舎にあるお堂を思わせるような風景に感じられます。どこか仙人が隠棲している聖山のような雰囲気です。

　でも、絵馬という日本オリジナルのアイテムがたくさん飾ってあって、その日中ミックスなところも面白く魅力のひとつですね。

　では、世にも珍しい儒教の御朱印です。結構書き方も面白いのでご覧ください。

　右下には萬世師表と書かれています。これは清の第4代皇帝康熙帝（愛新覚羅玄燁　アムフラン・ハーンとも）が中国曲阜市にある孔子旧宅を訪ねた際に、萬世師表と書いた扁額を掛けさせたことから孔子の別名として使われるようになった言葉です。

　さらに年号が令和壬寅歳となっているのも、他とは違いますね。大体、筆跡が隷書体のような字体なのも特徴的で、他では見られない御朱印となっています。

　ちなみに御朱印は下の写真の斯文会館の窓口でいただけます。