6月2日に当研究会代表世話人の中村造先生らによる論文がInfection Control of Hospital EpidemiologyにLetterとして掲載されました。論文の概要と当研究会による解説を以下に示します。
論文へのリンク日本における患者の移入前の新設病院での蛇口水のレジオネラ汚染I Nakamura, Y Miura, A Umeda, R Imura, Y Watanabe, H Watanabe: The
Legionella contamination of tap water in a brand-new hospital in Japan before patients move in. Infection Control & Hospital Epidemiology (2020), 1 doi:10.1017/ice.2020.79
[論文の概要]国内の大手建設会社により新築された東京医科大学病院の地上19階、地下3階建て、905床を有する新棟に患者が移る前に、レジオネラ汚染の調査を行った。27の水道蛇口、18の自動水栓、16のシャワーの合わせて66か所から500mlの水、122試料を採取し、WYO培地を用いて培養した。全試料のうち、高層階で採取した1試料から
Legionella feeleiiが検出された。
この調査は、平常業務を始める前の新設ビルの水道の蛇口におけるレジオネラ汚染の最初の報告となった。一度病院の業務を開始するとしつこくとどまり、広がっていくことができるレジオネラ属菌が増殖するリスクに、新築病院の水システムであっても建設中に曝されている可能性を考慮してこなかった。
[研究会による解説] これまでの病院やホテル等でのレジオネラ汚染調査では、建物の経年と汚染に関連があるとする報告が知られている。しかし、今回の調査では業務開始前の建物において既にレジオネラ汚染が発生していたことを示している。
L. feeleiiは検出例が少ない菌種であるが、1981年8月にカナダの自動車工場で本菌種を原因とするポンティアック熱の集団発生があり、317人の患者が報告されている。レジオネラ肺炎の起因菌でもあり、国内では患者からの分離例が1例ある。また、神奈川県内の医療機関の蛇口水から検出された例も報告されている。水環境から
L. pneumophila以外のレジオネラ属菌が検出された場合に注意すべき点は、菌が検出された環境にはレジオネラ属菌が増殖する条件が整っていることを示しているということである。検査した時点では
L. pneumophilaが検出されなくても、将来的に
L. pneumophilaが検出されるようになる可能性があり、レジオネラ属菌が増殖しないように対策を講じる必要がある。
レジオネラ汚染新設した病院論文紹介